君という光
5.
ベッドの上で達した後、バスルームでも抱き合った。
いくら抱いても、まるで乾いているように八戒への欲望は治まることはない。
伸ばされる腕を拒むことなく、八戒も三蔵に応えた。
腕の中の八戒は決して三蔵の心を見ようとしない。ただ身体の求める欲望に忠実なだけだった。
三蔵は理性が戻りそうになるとそれを無理にでも遠くへ押しやって、ただ八戒と生み出す快楽を貪った。
たとえ身体だけだとしても、八戒を繋ぎ止める何かが欲しかった。
何度か達した後、八戒は降り注ぐシャワーの下で崩れるように意識を手放した。
三蔵はその体を抱き留めて、疲労の色を浮かべる横顔を見つめた。
その優しい腕も穏やかに見つめる瞳も、八戒の意識のあるうちには向けられなかったものだった。
「馬鹿なやつ」
睦言のように囁いて、濡れた身体を抱きしめた。
体を清めると、三蔵は八戒を使わなかったベッドへと運んだ。
乱れて頬にかかった髪を整えてやりながら、死んだように眠る八戒の顔を見つめる。
眠っている顔までもが痛々しいほどきれいで、胸が痛んだ。
できることならば八戒の持つ、狂うほどの激しさを感じてみたいと思う。
奪われた恋人のために千人以上の妖怪を殺戮する程の愛情とは、どんなものだったのだろうか。
ただ一度八戒がその激しさを三蔵に見せたのは、自らの右眼を抉り取って投げ捨てた時だけだった。
その一瞬で、三蔵は囚われたのだ。
穏やかな仮面の下の、狂気にも似た熱情に。
寺院に連れ帰ってからの八戒は、まるで深い森の奥に知られることなく存在する湖のように、穏やかで静かな面しか見せなかった。
時折風が吹いて湖面に波をたてることがあっても、その奥深い所はそよとも動かない。
何人も、何ごとも、彼の心の奥底には届かない。それではまるで、何もなかったことと同じだ。
こんな道を外れるような行為でさえ、八戒にとってはその心の表面にさざ波を立てる程度のことでしかないのかもしれない。
それでも自分は、この男を愛してしまったのだ。
いつかその心の奥底にまで手を差し入れて、嫌というほど掻き乱してやる。
それまでは、偽りでも何でも吐くだろう。
ふと窓の外を見れば、金色の光が静かに降り注いでいた。
高い位置に昇った月は、既にいつも通り気高くも冷たい光で地上を照らし出している。
狭いこの部屋にも、その輝く光は射し込んでいた。
黄金色の光に照らされた八戒の顔を見つめながら、三蔵は小さく笑った。
「どうやら、嘘をつくのは得意らしい」
ため息のように呟くと、穏やかな寝息を立てる唇にそっと口づけを落とした。