スタート





1 .



「おっせえなぁ」
野に咲く花のように鮮やかな赤い髪を風に遊ばせながら、隣で悟浄が煙を吐き出した。
「待ち合わせの場所って、本当にココでいいの?」
「だいたいこの辺りの森の中って言っていたんですけどね」
「けっこーアバウトだかんなぁ、あの坊主」
秋とはいえまだきつい真昼の日差を避けるために左手を空に翳しながら、八戒は目を眇めて眼下に広がる森を見渡した。
「こんな早起きすんの、久しぶりだわ、オレ」
「もう午後の2時ですよ。明日からは早寝早起きでお願いしますね」
全く緊張感のない悟浄の様子に、八戒は思わず小さな笑いをもらした。
仕方のない人だ。今日は自分たちにとって特別な日だというのに。
「オレ、自信ねぇわ」
大きなアクビをしながら、悟浄が天を仰いで呟く。
つられて青い空を見上げると、一羽の鳥が高いところをゆっくりと旋回していた。
緩やかな風が足元の草花を小刻みに揺らして吹き抜けてゆく。
こんなのどかな風景を目にしていると、どこかで馬鹿なコトを考えている妖怪がいるなんて嘘みたいだ。
「ムダに晴れてんなぁ」
気負いのないのんびりとした悟浄の言葉に、八戒はふわりと微笑みを返した。
「旅立ちの日には相応しい日和ですね」




(2010.12.20)

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