smoky



with 悟浄


「どう?」
きれいな紅に彩られた少し翳りのある顔が、たった一本の煙草でまるで生き返ったように輝いてみえる。
嬉々として紫煙を吐き出す様子を眺めていたら、僕の視線に気づいた悟浄がすかさず一本差し出してきた。
「いただきます」
ベッドで、しかもセックスの直後に煙草を吸うのはどうかと思っていたのだけれど、悟浄があんまり旨そうに吸うからある時試してみたら案外悪くなくて、それ以来癖になっ ている。
もちろん相手が悟浄の時だけ。
差し出された煙草を受け取って、ついでにそのきれいに筋肉のついた肩から腕のラインに見とれながら唇に挟むと、すぐに顔を寄せて火を移してくれる。
「気持ちヨかった?」
辛くなかった?喉かわいてねぇ?寒くねぇ?
呆れるほどに僕なんかを気遣って優しくするのはいつものことだけど。
本当はそうやって、自分の中の欠けたトコロを埋めようとしているように見える。だってこんな時の悟浄はどこか上の空だ。
悟浄の銜える煙草の煙になってしまえたら。
肺の、胸の、腹の奥まで吸い込まれて。血液と混ざりあって体中を巡って、あなたを満たしてあげられるのに。
そうしたらもうその後は、吐き出されて消えてしまっても構わないのに。
求めてくれるなら、なんでもいい。
一時の気まぐれでも、寒さを凌ぐための暖でも、眠れない夜の慰みでも。
どうか、もっと求めてください。何でも差し出すから。
与えるばかりでは、あなたがいつか干からびてしまいそうで。本当はそんな時を待っているようで、怖くなる。
そう望むのなら、それに応えたいと願ってしまう、自分自身が。

「どうしたの?ぼんやりしちゃって」
長い指が短くなった煙草を僕の唇から取り上げて、灰皿に押しつける。
代わりに笑いの形の唇が落ちてきて、僕が自分の中の燻りに気づく間もないほどさりげなく続きへと誘うから。
僕はまた果てなく奪うばかりで、あなたに満たされてしまう。


end




(2010.2.12)

with 悟空→



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