smoky
with 三蔵
「そんなに吸ってばかりいては、身体に悪いですよ」
細く開けた窓辺で夜の風を入れながら一服するのが三蔵のお決まりの場所で、そこに立つということは、今夜はオシマイの合図だ。
以前副流煙の話しをして以来、二人で過ごすときはできる限り気を使ってくれているようだ。それでもつい、小言めいたことが口をついてしまう。
「年間10万人の方が煙草の吸いすぎでなくなっているんです。知っていますか?」
「一体それは、どこの国の統計だ?」
神に選ばれた特別な人。汚れることを知らない、稀有な人。
できるだけ、大切にしたいのだ。
抱き合う最中はいつもこの人を穢しているのではないかと怯えながら後悔しながら、それでも弱い僕は流されて。
コトが終わればいつもと何ら変わりない三蔵の姿に、自分なんかに穢せるわけがないのだと思い知り、安堵するよりも打ちのめされて嫉妬して。
バランスを欠いた天秤のように両極端に激しく揺れる醜い胸の内を、きっと三蔵は全て知っている。
服従し隷属したいという、ほの暗い欲求までも。
夜の風を受けて揺れる金の髪も肩にひっかけただけの白いシャツも闇を睨みつける真っ直ぐな瞳も、僕のこの場所からはひどく遠くて安心する。
どうかこのまま、あなたはきれいなままでいて下さい。
誰にも何にも傷つけさせないから。それは汚れた僕自身にさえも。
そう願う心は真実なのに。
ずるい僕は胸の奥底で密かに願っている。
この、闇も切り裂くような眩しい人が、罰をくれることを。僕と同じ泥の中に立ち、その掌を汚して傷をつけてくれることを。
そうと知っているから三蔵は、こんな夜にはことさら僕を甘やかす。
「なにぼんやりしてんだ、寝るぞ」
空のままの隣のベッドには見向きもしないで当然のように同じベッドに戻ってくると、僕をひきよせて横になる。
解けなくなるのではと心配になるほどに、その暖かい腕をしっかりと僕の体に絡ませて。
欲しいモノは決してくれないこの温もりに、僕は安堵して眠りにつく。
end
(2010.2.12)
with 悟浄→