feel so good









三蔵たちも呼びましょうかという提案を断って二人きりで過ごした夕食は、
いつもより少し豪華な料理と少し高価なワイン。
いつの間にかオレ好みの味つけに変わっていった同居人の料理の腕に改めて感心して、
めずらしく素直に誉めたら、なぜか少し拗ねられた。
テーブルの上には赤いイチゴを三つ乗せ白い生クリームを纏った小さなケーキ。
二人とも滅多に甘いモンは食べないけど、今夜は特別だ。
とても初めて作ったとは思えないその本格的な出来栄えに感心して眺めながら、
例えば食べないで、クリームをああしてイチゴはこうしてと思い巡らせる。
楽し過ぎる想像に思わず口許が緩んだ瞬間。

「悟浄、ちょっとここに来てください」
皿を下げてお茶の準備をしていた八戒が、
俺の邪心を見透かすようにコワイ顔でソファに腰を下ろし手招いた。
「まだナニもしてねーじゃん」
「何言ってるんですか、あなた」
八戒はしかられるガキみたいにおずおずと隣に座ったオレの頭に腕をのばすと、
ぎゅっと抱え込んで引き寄せる。
「へ?」
あっという間に膝枕されて見上げた八戒の顔には、ケーキに負けないくらいの甘い微笑み。
「あれ?ケーキは?」
「その前に」
祝福の言葉と一緒に、甘く柔らかい唇が落ちてきた。



優しい指が髪を撫でる。
梳き下ろし時折気まぐれのように掬い上げてハラハラと乱れさせるかと思うと、
小さな含み笑いをもらしながらもう一度ゆっくりと梳き下ろす。
忌まわしいだけだった紅をそっとかき分けるきれいな指先。
何度も繰り返されるこの動きが愛撫のつもりなのか、ただ遊んでいるだけなのかわからない。
どっちでも構わない。
いつもは身体中に熱を植え付けてオレを狂わせる指先が、こんなに穏やかな気持ちをもたらしてくれる。
そのことに驚きながら、八戒の膝の上でただどうしようもなく気持ちよくて目を閉じる。


半分あっちに行ってるような瞳をしていた八戒が、いつの頃からか穏やかに微笑むようになっていて。
それなのに熾火のように燻り続ける瞳の中の熱だけはどんどん強くなってきて。
俺を身動きできなくして。
底のない程深い執着に付き合うことがコイツのためにできることだなんて
思い上がったことを考えていたこともあったけど、そんなこともうどうでもいいと最近は思う。
こんな日に、こんなふうに一緒にいられる相手がいるだけで。
それがコイツだというだけで。
もう、それだけで、充分。



「お湯が」
八戒の身体が小さく揺れた。
台所の薬缶が音をたて始めている。
そういえば食後のお茶を淹れるからと、湯を沸かしていたんだっけ。
買い換えたばかりのコンロは目下八戒の一番のお気に入りで、
今夜の料理の力の入れようも半分はそいつのお陰かもしれない。
「もうちょっと、いいじゃん」
「火事になってしまいますよ」
そういいながらも八戒は、ゆっくりと髪を撫でたまま立ち上がろうとはしない。
薬缶は賑やかな音を発して震えながら、白い蒸気を盛大に吹き出している。
あぁそろそろ限界かと思った時、カチと音をたててコンロの火が消えた。

「温度が上がりすぎると自動で消火するんですよ。便利ですね」
どうやっても消えそうもない熱を宿しながら、八戒が微笑みを寄こした。
じゃあ安心してもう少し、と甘えてみたら、今度は少し冷たい指先がそっと頬を撫でてくれる。
「ケーキはあとで、ゆっくり、味わいましょう」
その囁きに混ざる熱を感じ取って、胸の中にさざ波が湧き起こった。
「すっげー楽しみ…」
でも今は、もう少しこの柔らかい時間を味わいたいから。

唇に優しく触れる指先を感じながら、オレはもう一度目を閉じた。






end







あぁ、相変わらず八戒がさかってる。
どうやったら甘くなるのかわからなくて…とりあえず生クリームプレイとか甘いかな?なんて考えました。
ごめんなさい…(汗)

お誕生日おめでとう、悟浄♪


(2009.11.9)




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